行者にんにくとニラを掛け合わせた『行者菜』は硫化アリルや βカロテン、ビタミン類が極めて高く、今注目を浴びる野菜の一つ。その『行者菜』を田野畑村で唯一栽培しているのが畠山清一さん。料理のアレンジもしやすく評判も上々で、田野畑の新しい特産物にすべく奮闘中です。
村の高台に位置する和野地区。7月半ば、畠山さんの畑では今年初めて収穫をする『行者菜』の出荷がピークを迎えていました。青々とハリのある葉は一見するとニラのようですが、茎は太くてボリュームたっぷり。刈り取った根元からはニンニクの香りがして、食欲をそそります。
「まだ馴染みがない野菜ですが、ここ数年で人気が高まっている注目の食材です。行者にんにくとニラのいいところを併せ持っているんですよ」。
その特徴は、硫化アリルが行者にんにくの3倍近く含まれていること。疲労回復や殺菌効果に優れており、血液中の脂質を減らし生活習慣病予防に役立つと言われています。『行者菜』は、ビタミン類(A、B1、C、E)も豊富で貧血や動脈硬化防止、認知症予防などさまざまな効果が期待されている“野菜界のニューフェイス”なのです。
畠山さんは数年前まで行者にんにくを栽培していましたが、生育に時間を要する割に出荷期間が短いことなどから、何か新しい野菜がないか探していました。そのとき出会ったのが、数年前に研究開発されたばかりの『行者菜』です。現在は山形県を中心に徐々に栽培が進んでいますが、岩手県では「岩手県行者菜生産組合」のメンバー約20人が栽培に取り組んでいる程度。『行者菜』の存在を知った畠山さんは、「ぜひ田野畑村でも育てられるように」と山形まで足を運び、相談を繰り返すうちにようやく許可を得ることができたのです。
『行者菜』は病気や害虫にも強く、元肥を与え、根がぶつからないよう畝を広くとって育てれば、無農薬で育てられます。収穫後も葉先のとろけが出にくく冷蔵すれば1週間から10日ほど鮮度を保つので、主婦の皆さんからも好評です。
「見た目はニラですが、味や風味は行者にんにくに似ています。料理にも使いやすくニラ玉風にしたり、鍋に入れるのもいい。ギョウザもいいね。とにかく体に良い野菜ですから、夏場の体力維持・増強に、ぜひ積極的にとって欲しいね」と畠山さんはにっこり。
秋、収穫期を終えた『行者菜』は根をしっかり根を休めて、来年に向けて美味しさを蓄えていきます。