創業8年目を迎えた「㈱サンマッシュ田野畑」。田野畑の環境を生かした産業振興を目的に始まった、菌床シイタケ栽培の工場です。「品質のよいおいしいシイタケ」づくりに励むのは35人のスタッフたち。ぷりっと肉厚なシイタケが生まれる現場を、工場長の青木貴行さんが案内してくれました。
すでに収穫が終わった午後。出荷の準備が進む工場に入ると、ふわりとシイタケの香りが漂ってきます。積み上げられたケースには、カサがふっくらと丸みを帯びたシイタケがどっさり。
「シイタケは収穫後も成長します。ひだの膜が切れていない品質のよい状態で収穫し、皆さんの食卓に迅速に届ける。そのことを大切に考えて生産しています」と青木さん。沿岸から遠方への輸送は時間のハンデがありますが、冷蔵温度は2~3度に管理するなど鮮度保持をしっかり行っています。
安定した品質を保つためには、シイタケの栄養源となる菌床づくりが重要です。サンマッシュ田野畑では、ナラやクヌギ、シイ、カシなどを材料にした木材チップとおがくずをブレンドし、さらにふすま粉などの栄養を加えています。細かいおがくずを入れることで常に一定の含水量を保っているのです。菌床栽培と聞けば「数日で収穫」と思うかもしれませんが、それはキノコを培養する菌床が仕上がってからの話。完熟菌床と呼ばれる培養地をつくるまでに80日以上もかかるのです。
「培養地づくりは一番大切な行程。温度や湿度、換気量の管理が重要です。扉を開けて風や湿度を調整することもありますが、夏も冷涼な田野畑はシイタケ栽培に適した環境ですね。たまに浜から吹く『やませ』の霧風は、人工的に再現できない最高の風です」と青木工場長。
サンマッシュ田野畑では、年間約150トンの菌床シイタケを栽培。毎日、八戸や盛岡、仙台、福島、埼玉、東京の6市場に400~500キロも出荷しています。栽培量も年々増えており、人気も上々。
「田野畑は山が多く、自然林がたくさんあります。地元の木材を培養地に活用し、使用後も地元農家の堆肥に使うなど循環的に活用していきたいですね」と、将来の構想に思いを馳せる青木さんです。