「分からないことがあったら、ナツさんに訊け!」 ある農家の会合で、こんな声を耳にしました。農業一筋○十年という熟練者が集まる会合で、まるで生き字引のように頼りにされる「ナツさん」とは…? 田野畑村巣合地区で、四季折々の野菜を育てる中村ナツさん&真文さん親子を訪ねました。
浜から山側へ車で10分ほど走ると、田野畑の景色は一転して農村風景に。海から吹く冷たい風は、一山越えてほど良く涼しい風となって畑に届き、夏の野菜づくりに一役買っています。6月、巣合地区の小高い土地にある中村さんの畑は、これから旬を迎えるブロッコリーの葉が青々と成長中でした。
「皆で情報を共有しながら、おいしい野菜づくりに向けて改善していくのが田野畑村のやり方です」(真文さん)
「6月の雨によって花蕾(食べる部分)がぐんと大きく育つので、食味がおちないように収穫するタイミングが大事です」と真文さん。この季節は気が抜けないといいます。
一方、隣接する9・6aのビニールハウスには艶やかなピーマンが実っていました。どれもまっすぐキレイな形のピーマンばかりですが、それは地道な作業があってこそ。枝を糸で吊り上げる誘引という方法で、一つひとつの実の成長を調整しているのです。
「実の下に葉や枝があると曲がって育つので、糸の張り具合でピーマンのストレスを調整するの」とナツさん。25年程前に村で最初にピーマン栽培をはじめたナツさんは、隣の岩泉町へ足を運んでその作り方を勉強したといいます。聞けば、代々続く農家ではなく、平成2年に旦那さんと二人で農業を始めたとのこと。しかし今では、勉強熱心なナツさんの野菜づくりに深い信頼を寄せる農家仲間も多く、いつしかこんなことを言う人も現れました。「分からないことがあったら、ナツさんに訊け!」
山の向こうは海。村ならではの環境を活かすため、毎年土壌診断と土壌改良を続けえています
ハウス栽培のピーマンは秋まで出荷、露地栽培はブロッコリーが終わると、ネギ、ニンジン、キャベツ、葉ミツバへと移行。季節ごとのおいしい野菜を出荷していきます。