別に勿体つけていた訳ではありませんが、田野畑流「おもてなし料理」コンテストの結果について、グランプリの発表がまだでした。他にも多々、語りたい、お伝えしたい料理やチームがあるなか、いきなり最優秀グランプリにいくのも… と思いズレこんでいましたが、もういいでしょう。こちらです。
「早春の羅賀のおもてなし料理」(田野畑村漁協 田野畑浜女性部)
「田野畑村 羅賀周辺は、春になると磯の香りに包まれます。早春にはじまるショイの口開け(海藻とりの解禁)で採れた岩のりやマツモなど、磯のものを調理してごちそうに仕上げました」 そんなメッセージがおしながきに添えられていました。
代表の熊谷裕美子さんが「羅賀でこの時季に採れる海藻の香りを届けたい、そんな気持ちで作りました」と教えてくれました。また「昔ながらの味を伝えたいという思いを込めています」とも。その言葉どおり御膳からは磯の香りが立ち上るかのようで、素材の良さと人の技がみごと融け合っているのが分かります。
例えばこちら、一見、のり巻きに見えますが、実は「岩のりのおにぎり」。昔はこの季節、どの家庭の台所からも採ったばかりの海苔をまな板上で叩く音が聞こえてきたそうです。「今は夜なよなやっているのは、うちぐらいかもしれません」と笑う熊谷さん。おにぎりの中身は塩ウニ。岩のりがはこぶ濃い磯の香りと塩ウニの旨みが一気に口のなかで広がり、「早春の羅賀のおもてなし」、その名の通りのおいしさです。
おにぎりの脇に添えられているのが「カレイなます」。こちら「子や孫に本当に食べて欲しい“田野畑らしい料理”は何ですか?」にもあるとおり“最も田野畑らしい料理”といっても過言ではない「どんこなます」ですが、羅賀地区においては、なますといえばどんこ(アイナメ)ではなくカレイなのだそうです。
「なますって、カレイで作るのが当り前だと思っていた」という熊谷さん。焼いてあぶった干しカレイをなますに入れておくと、溶けてとてもおいしくなります、と教えてくれました。そして、それほどに羅賀の生活になじんでいるカレイだけあって、もう一皿カレイを生かした料理が並びます。
「なめたカレイの煮付け」です。カレイは正月に干して煮つけやなますにするだけではなく、煮しめなどにもするそうで、この時季の羅賀のハレの日料理には欠かせない一品なのです。
ご飯や煮付けのあと、ちょっと喉を潤したいときにピッタリなのが「シウリ貝とマツモのお吸い物」。
貝とマツモからでる出汁の旨みがおいしさに一層の深みを与え、それでいてとても澄んでいて上品な味わいです。
海藻の香りを届けたい、そう思って作られた料理だけに、どうしても色味的には地味な料理が多くなります。そんな中ひときわ目を引くのが「イカの酢漬け」。昔は祝いの席には必ず用意したそうです。ところがご覧のとおりとても手間のかかる料理だけに、作る人もそして機会も近年すっかり減ってしまい、こうした場でしっかり人の目に触れ、受け継いでいくことが必要と考え用意して下さいました。
他にも地元の新巻鮭をまいた「特製昆布巻き」や「マツモの佃煮」、早採りワカメの茎を甘じょっぱく煮付けた「茎っこ煮」に、岩手県食の匠のメニューにもある「ワカメの羊かん」など、本当に漁協のお母さんたちの料理の知恵とワザの粋を投影した品々が揃いました。
審査員長の伊藤勝康シェフも「全体的なバランスがとても良くとれており、特にカレイなますはパンチが効いており、強く印象に残りました」とコメントしていました。
田野畑流「おもてなし料理」コンテスト 2016冬〜春 グランプリを飾るにふさわしい料理の完成です。こうして発見・発掘した料理や食材を今後はさらに多くの方に実際に食べていただけるよう、機会の創出、料理の製品化を進めていきます。みなさん、お疲れさまでした〜!!